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光が小さな声で謝ってくる。なんで。なんで光が謝るの? 「俺、何か……お前の気持ちも知らずに、……怒鳴って……ごめん、 お前にはきっと、すげー辛い事、あるんだよな……」 光が申し訳無さそうに言う。あたしの頭は疑問符でいっぱいだった。 なんで光が謝る必要があるの? 謝らなきゃいけないのは、あたしだけなのに……。 麻川さんでも、先輩でも、光でもない、あたしだけなのに……。 あたしの胸の中でうずめく黒いもや。 「なのに、俺……ごめん、……無責任な事言って、……俺、なんか、 ほんと馬鹿だよな、お前の事、困らせてばっかじゃん」 違うの。違うの、光が悪いんじゃなくて、 伝えようと口を動かせようとした時、光が口をあけた。 「もう、お前の事に、変な風に突っ込まないから……」 話すために開いた口は、そのまま固まった。 つまりそれって、もう、あたし……。 光はごめんな、と呟くと家まで帰って行った。 あたしはさっきまで光がいた場所を見ながら、どうすることもできずにいた。 迷惑、掛けた。謝らせた。なんにも悪くないのに、謝らせた。 なんでこんなに、あたしって、あたしは、あたしは。 麻川さんも光も、優しすぎてあたしの自分勝手さだけが浮いて見える。 涙が出てくる。自分が悪いのに。全く、自己中だ。涙を拭って、空を見上げる。 白い息が出てくる。それと一緒に、止まらない涙が頬を伝っていく。 やさしさばかりをくれる光にはもう、頼れない。これ以上頼れば、 光には迷惑をかけてしまうだけだ。先輩には愛想つかれた。 ――……もう、いない……自分で、無くしたんだ……。なんで、こんなにあたしは、最低なやつなんだろう、。 溢れた涙が、ぽつりと砂場に染込んでいった。重い足取りで、家まで帰って行った。 明日は先輩に会えるというのに、明日になりたくないと思う自分。 ベッドの上で、ずっと寝ていたかった。でもあたりまえのように"明日"は来てしまった。 謝らないでよ。 ←BACK NEXT→ |