アオの迷子。




 シュンは、ナナの買い物に付き合っていた。デートというやつだ。

「あたし、これ、欲しいな……でも、」
「ん? どしたの」
「お金、持って来るの忘れちゃったの」

 ナナは値段の高いヒールを指差し寂しそうな顔をした。ナナはそこから動こうとしない。 そうとう欲しいんだな、と思ったシュンは自分の財布の中身を見る。 大丈夫、4万持って来たんだから。ちょっとぐらい。と、シュンは「買うよ」といった。

「ほんと!」喜ぶナナの顔を見るために。


 夜。深呼吸をして、ぼくは青山さんに電話を掛ける。週末のデートのお誘いだ。 コールが何回か鳴って、最高にドキドキが止まらなくなる。 でも初めての時よりもは、ちょっとはましになっている気がする。 いやでも気がするってだけで、やっぱりドキドキはバクバクに近い。

「はい、青山です」
「井上です!」
「ん?」

 心地良くて、優しい声にどきどきは最高潮。

「あの……週末、一緒にあそばないかなーなんて、思って」

 小さくなっていくぼくの声。青山さんの反応が無い。 気を遣って(言えなかっただけだけど)ダブルデート、って単語は使わなかった。だけど。
断られる、……馬鹿だぼく。嫌に決まってるよね。こんないきなり、無理に決まってるよ、うん。 ほんの少しの期待もそりゃあ……ちょっとはあったけど、あったけど。あったけ

「いいよ。じゃあ、どこ行けば良い?」

 ふふ、と笑い声が聞こえてから青山さんの返事が返ってきた。
うそだ! ほんとに! 興奮まじりにぼくはいった。うそだ、本当に思えない。 なんで? え、うっそだ。ぼくはもう嬉しすぎて体をもぞもぞねじらせながら安堵のため息をひとつつく。

「○○公園に10時、っていうか、……ほんとにいいの?」
「全然。むしろありがとうって感じだし。誰かほかにいるの?」
「えっと…一応、もう2人。かな? 女子とぼくの友達、」
「……ふふ、」
「そうしたの?」
「それってなんだかダブルデートみたいだね、」
「え……?」

 ダブルデート? 待って、今、青山さん、ダブルデートっていったの?  嘘だ。青山さんはくすくすと笑っているけど、ぼくはなにも言えなくて。 なぜなら、ぼくの思考回路は完全停止されてしまったからだ。 だって、ダブルデート? デートだよ。デートっていったよ青山さん!  (自分でもテンションがおかしくなってるのには気が付いているけど、 みんなは気がつかないフリをしてくれていれば嬉しいです、はい)
「じゃあ楽しみにしてる、おやすみなさい」
「うん、」

 小さくガッツポーズをして、ベッドに寝転んだ。楽しみ? どんぐらい?  ぼくと同じぐらい楽しみだったら、いいのになあ……。

 その次の日も、次の日も、シュンは笹川さんとデートだった。 そして、デートする度にシュンが笹川さんに惚れていって、溺れていってる気がした。 あの日からシュンとヒカルは雰囲気が悪く、どっちも頑固者だし仲直りをする気配はない (なんだかんだヒカルはシュンが心配で、シュンに喋るぼくの横に来たりするんだけど)
 ……そもそもシュンが笹川さんとばっかりいるから駄目なんだけど。 まあ、明後日は青山さんとデートだ。ぜんぶ忘れよう!




その言葉の意味を教えて。




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