アオの迷子。




 その日の授業は、全く集中できなかった。 シュンはずっと上の空で、ぼくとヒカルもそれを心配してずっと見てたら、先生に教科書で叩かれた。 "今の大事な時期に"そういわれたけれど、大事な時期ってゆう言葉の意味はぼくには分からなかった。

 そして放課後。ぼくはシュンの方に行って、喋りかけた。

「ねえシュン、もいっかい考え直」
「うっさい。ハルキいーかげんその優しいですアピールすんのやめろよ。うぜー、」
「おいシュン、そんな言い方ねーだろ!」

 ヒカルが、ぼくを手でどかしてシュンの前に行って思いっきり怒鳴った。 するとシュンは溜め息をついて、ヒカルを睨んだ。ぼくが間に入れるような 雰囲気でない事は、今までの経験上よく分かっているつもりだ。ぼくは少し後ろに下がる。

「……せーな、ヒカルはあの向井とかいうガキの相手でもしてろよ」
「、んだとこのやろ……! 彼女できたからって調子乗ってんなよ!」
「でもヒカルは無いだろ? みんなが美女だって騒いでる女子と付き合ったことなんて」
「……お前、なめてっとぶっ殺すぞ」
「やってみろよ。どーせできもしないくせに。お前いつだってうじうじして、曖昧にして。 向井の事だって。俺他の奴から聞いたよ、クッキー貰った時向井の手引っ張って 校庭連れてって、クッキー美味しそうに食べたんだろ?  お前はなにもできねー弱虫なんだよ。そーいうの本気ウザいよ。ほら、やれよ。殺してみろよ!」
「ああやるよ!」
「ちょ、2人!」

 ヒカルがシュンに殴りかかろうとするのを一生懸命間に入って宥めるぼく。 2人に挟まれて、そして2人に睨まれはしたけどでも2人が喧嘩するよりもはマシだ。そう思った。 シュンはぶつぶつ言って教室を出て行って、ヒカルは舌打ちしてやっと収まった。 いつも2人はよく喧嘩してきた。だけど、だけど、本当に殴りかかろうとするなんて。 初めての事に抑えきれない胸騒ぎがぼくを支配していた。

 次の日の朝、シュンが本当にアクサセリーを買ったのか心配でぼくはいつもより先に1人で学校に来た。 その考えと一緒だったのか、ぼくが教室のドアを開けるともうヒカルがいた。 机の上で頬杖をついてぼーっとしている。ぼくが教室に入った瞬間ヒカルと目があったけれど、 会釈するだけで言葉は交わさなかった。2人きりの教室に気まずい空気が流れる。
 しばらくしていつもと同じ時間に笑顔のシュンが来て、ぼくとヒカルは走ってシュンのところまで行く。

「どしたの2人。早いな。おはよーさん」
「アクセサリー、ほんとに買ったの?」

 ぼくが不安そうに言うと、シュンは当たり前でしょというように笑って、頷いた。 ヒカルと顔を見合わせて、小さく溜め息をついた。

「だってナナのためだし」

 その笑顔が、なんだか異様に切なかった。




お前の笑顔が見たいんだ。




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