ベッドの上で考えていた。 "……麻川は、……好きじゃない" 先輩、それってどういう意味ですか。「麻川のこと、さくらは好きじゃない?」て、聞きたかったの? ――それとも「麻川のことは好きじゃない」て、言いたかったの? もしそうであれば、もしそう言いたかったのであれば。 少しだけ、彼女になれるかもなんて、期待しても良いですか。 次の日の朝、あたしが登校してくるともう麻川さんはいて、莉子と喋っていた。 あたしに気付いた莉子が笑いながらこっちこっちと手招きしてくる。あたしは椅子に座った。 「ちょっと聞いてよー! 知佳さーおかしいんだよー。 この子1こ上の彼氏いるんだけど、1ヶ月に1回しかデートしないんだってー」 莉子が笑いながらいうその言葉に、あたしは固まる。 「ち、違うの。いろいろやっぱり、……都合が合わなくて。先輩、大変らしいから……」 麻川さんは慌てながらそう言った。冷や汗が背中を伝った。歯がかちかちと震え始める。 あたしはごくりと生唾を飲んだ。へえ、とか、そうなんだ、とか適当に相槌を打つことしかできなかった。 麻川さんの彼氏が先輩だと言うことは、どうやら莉子は知っているらしい。 でも、あたしが先輩のことを素敵だと言っていたことを莉子はもう忘れただろうし、 先輩との関係は誰にも言っていないから莉子はあたしと先輩(……と、麻川さん)との関係を知らない。 「……不安じゃない、の?」 あたしは恐る恐る聞いた。 麻川さんはん? という表情をしてしばらくしてから口を開いた。 「そう、だね……。まあ電話してるから我侭言えないけど。だけど……気になること、あって」 麻川さんは遠慮がちに呟いた。曖昧な笑いが、またあたしの胸を締め付けた。 気になること? それって、あたしのこと……? その日の授業はいつも通り全く集中できないまま、放課後になった。 「千葉さん」 綺麗な声で声をかけられ、あたしは振り向く。 「今日一緒に帰らない?」 胸の中に一瞬でどすん、と重く黒いものが圧し掛かった。あたしはまともに麻川さんの顔が見れなかった。 「あー……ごめん。今日、さ、用事あるから。あ、明日じゃ駄目かな?」 「ううん、全然いいよ。いきなりごめんね?」 「あ、こっちこそごめん」 「ありがとね。じゃあまた明日」 麻川さんはにこっと首を傾けて、麻川さんのことを呼ぶ友達たちの方へと歩いていった。 振り返って、手を振ってじゃあねと口ぱくで言ったのが見えた。 なんであたしと……どくどくと心臓が鳴る。まるで"危険だよ、"といっているように。 まるで警告しているように。麻川さんは危険だよ、といっているように。胸がざわつく。なにかが起こる気がする。 「先輩……」 いつもより速足で先輩の家へ向かった。 こんなに胸が締め付けられるから、あなたに少しでも。少しでも早く、会いたくて。 愛していると聞かせて。 ←BACK NEXT→ |