その次の日、ぼくとシュンとヒカルの3人でぼくの部屋にてWiiで遊んでいると、 お母さんが部屋をノックしてきた。ハルキーと名前を呼ばれ、 ぼくは自分のキャラクターを操作しながらなにーと返事をする。 「アユちゃん来てるわよー」 「アユ……?」 シュンとヒカルに見られて、ぼくはゲームを中止させた。2人の顔を順番に見た後に首をかしげる。 ハルキ、ともう1度名前を呼ばれ、ぼくは立ち上がってドアを開けた。 「あゆって誰……」 「はっるきー!」 ……なにがなんだかわからない。 ぼくがドアを開けた瞬間にドアの向こうにいたそいつはぼくに抱きついてきた。 ぼくは突然のことに困惑しながら、とりあえず深呼吸する。 ……むむむむむ胸、当たってるっつーの……。ちょっと、えっと、あの、すいません、あの、えっと。 ぼくはおろおろとそんな言葉にならないようなことをいいながらそいつをひっぺはがそうとした。 「久しぶりじゃん! ねえ、誰か分かる? あたし!」 そいつはぼくから離れると、にこっとわらって人さし指をぼくの目の前で立てた。 首をかしげる僕の後ろでシュンとヒカルが小さくハルキの彼女? といったのが聞こえて、ぼくはふたりを睨む。 ごめんごめん、とわらうふたりを見てそいつ……髪がやったら長い謎の女は声をあげた。 「あーっ! シュンとヒカルもいるじゃん! やばー、マジ運命的な再会じゃん!」 隣で凄い大きな声をだされて、ぼくの頭はがんがんしている。 謎の女はぼくの部屋にずかずかと入っていくと、戸惑うふたりの肩に手を置いた。 「お久しぶり!」 「……もしかして、」 ヒカルが小さく呟く。そしてはっとして、肩に置かれた手を振りほどいた。 謎の女は驚きながら、ヒカルから目をそらした。だから誰なんだよお前。 「あたしあたし! 福島アユだよ!」 「やった勝った! これで3勝連続じゃん! はい金、金」 「またかよー。絶対お前なんか仕組んでるだろ」 「負け犬の遠吠えってゆーんだよそーいうの」 アユはそういうとぼくとシュンに手を向けてきた。ぼくは仕方なく100円玉をその掌に乗せた。 アユはぼくとシュンから奪った200円を握りしめるとどーもー、と微笑む。 ヒカルは女がアユだと知った瞬間に部屋を出ていって、それっきり帰ってこない。 どうしたのかな、と呟くアユの表情が暗いことに胸が痛くなったぼくはさんにんでゲームをしようと提案したのだ。 「違うゲームにしよーぜなんか本気悔しい」 シュンが口をとがらせながらそういった時、アユは時計をちらりと見て、 あ、待ったと小さくいった。時間やばい? とぼくが首をかしげるとアユは頷く。 「もう? 早くない?」 「つかなんだよ。勝ち逃げかよ」 「っていうかそもそもなんでこっち来たの」 ぼくが聞くとアユはパーカーをはおりながら答える。 「なんか、部屋の掃除してたら昔の4人で撮った写真出てきてさ。 あー懐かしいな、なんて思ってたら来たくなっちゃった。ほら、昔あたしたち仲良かったじゃん」 そうだ。ぼくとシュンとヒカル、それからこの女アユは昔から幼馴染で、 毎日といっていいほど誰かの家で集まってゲームをしたり、公園で鬼ごっこしたりかくれんぼしたり、 小学生になると万引き誰がいちばん多くできるでしょうかゲームだとかエロ本誰がいちばん先に 読めるでしょうかゲームだとかもやった。 「にしてもほんと変わってないねハルキもシュンも」 「アユは変わったよな。なんか、うん。……昔あんだけ男っぽかったのに」 「っていうか今思えばあれただのセクハラよ、せ・く・は・ら!」 ぼくたち男3人はアユのことも男だと信じていたから、一緒にお風呂も入ったし 普通にアユがいる前で3人でいろいろ見せあいっこしてた。だけど、小学校になって、 ぼくたち3人が大きさを比べてる時アユが恥ずかしそうにして目をそらしていることにシュンが違和感を感じて。 アユに、おまえのも見せろよーといったことがあった。恥ずかしがるアユ(そりゃそうだ、だって女なんだから) を見て、やっとぼくたちは気づいたのだ。「こいつ、男じゃないんだ!」 謎の女は突然に ←BACK NEXT→ |