汚い足跡はどうやったって消すことができなかった。それがはがゆくてはがゆくて、 どうにかしたいのにどうにもならなくて、どうにもできなくて、 もう帰れないこと、もう戻れないこと。改めて実感して、ぼくはまた闇におぼれてゆく。

さわれば壊れてしまいそうなきみの肩。あいしてるよ、と震えながらきみは呟いて ぼくはまた少しずつ堕ちていく。

差し伸ばしてくれていると思っていたきみの右手はもう誰かの左手によって埋められていて、 ありふれた罪にぼくはなんの夢を見ていたんだろうかと疑問に思った。 もう帰れないこと、もう戻れないこと。それがわかっただけで十分なはずだったのに、 それでもやっぱりぼくはなれない。、ぼくはいまだ空気になれないんだ。




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